身体障害者手帳 肢体不自由 障害程度等級表解説

1 総括的解説


(1)
肢体不自由は機能の障害の程度をもって判定するものであるが、その判定は、強制されて行われた一時的能力でしてはならない。
例えば、肢体不自由者が無理をすれば1 km の距離は歩行できるが、そのために症状が悪化したり、又は疲労、疼痛等のために翌日は休業しなければならないようなものは1km歩行可能者とはいえない。

(2)
肢体の疼痛又は筋力低下等の障害も、客観的に証明でき又は妥当と思われるものは機能障害として取扱う。
具体的な例は次のとおりである。

    ア 疼痛による機能障害
  • 筋力テスト、関節可動域の測定又は] 線写真等により、疼痛による障害があることが医学的に証明されるもの
    イ 筋力低下による機能障害
  • 筋萎縮、筋の緊張等筋力低下をきたす原因が医学的に認められ、かつ、徒手筋力テスト、関節可動域の測定等により、筋力低下による障害があることが医学的に証明されるもの

(3)
全廃とは、関節可動域(以下、他動的可動域とする)が10 度以内、筋力では徒手筋力テストで2以下に相当するものをいう(肩及び足の各関節可動域は除く)。

機能の著しい障害とは、以下に示す各々の部位で関節可動域が日常生活に支障をきたすと見なされる値(概ね90 度)のほぼ30%(概ね30 度以下)のものをいい、筋力では徒手筋力テストで3( 5点法)に相当するものをいう(肩及び足の各関節可動域は除く)。

軽度の障害とは、日常生活に支障をきたすと見なされる値(概ね90 度で足関節の場合は30 度を超えないもの。)又は、筋力では徒手筋力テストで各運動方向平均が4に相当するものをいう。
(注) 関節可動域は連続した運動の範囲としてとらえ、筋力は徒手筋力テストの各運動方向の平均値を以って評価する。

(4 )
この解説においてあげた具体例の数値は、機能障害の一面を表わしたものであるので、その判定に当たっては、その機能障害全般を総合した上で定めなければならない。
具体的な例は次のとおりである。

    (例T)
  • ある関節障害において徒手筋力テストで3に相当していても、関節可動域の制限が乏しく、動作・活動能力の評価では○ (自立) の項目が多くあるなど目的動作能力が比較的に保たれている場合、著しい機能障害ではなく軽度の機能障害として認定することが妥当である。
    (例2)
  • 単に片脚起立が不可能であることのみを以っては、一下肢の機能全廃とは認定しない。

(5)
肢体の機能障害の程度の判定は義肢、装具等の補装具を装着しない状態で行うものであること。
ただし、人工骨頭又は人工関節については、2 の各項解説に定めるところによる。

(6)
四肢の障害は基本的には障害部位を個々に判定した上、総合的に障害程度を認定するものである。
例えば、下肢の3大関節のうち足関節だけが筋力テスト、関節可動域等から全廃の状態で(他の関節は正常)、それにより歩行動作が不能の場合は、障害の部位を限定して足関節の全廃として認定することとする。

(7)
加齢または精神機能の衰退に起因する日常生活動作不能の状態は、それをもって身体障害と認定はできない。
ただし、四肢体幹各部位の著しい筋力低下や強直に近い関節可動域の制限、麻痺等運動障害が存在し、寝たきり状態が回復せず、永続するものと認められる場合には、二次的か否かにかかわらず、当該身体機能の障害として認定することとする。
例えば、アルツハイマー型認知症で筋力の著しい障害や関節拘縮が認められ、寝たきり状態になっている場合などである。

(8)
乳幼児期以前に発現した非進行性の脳病変によってもたらされた脳原性運動機能障害については、その障害の特性を考慮し、上肢不自由、下肢不自由、体幹不自由の一般的認定方法によらず別途の方法によることとしたものである。


【参考】徒手筋力検査法(MMT:Manual Muscle Testing)の基本的6段階

  • 5(Normal):運動範囲全体に渡って動かすことができ、最大の徒手抵抗に抗して最終運動域を保持できる。強い抵抗を加えても、完全に運動できる。上肢・下肢は挙上可能
  • 4(Good):運動範囲全体に渡って動かすことができ、中等度〜強度の徒手抵抗に抗して最終運動域を保持できる。重力以上の抵抗を加えても肘関節あるいは膝関節の運動を起こすことができ上肢は挙上できるが弱い。下肢は膝立て可能で寝たまま下腿を挙上できる。
  • 3(Fair):運動範囲全体に渡って動かすことができるが、徒手抵抗には抗することができない。重力に対して肘関節あるいは膝関節の運動を起せる。 上肢はようやく挙上可能、保持は困難。下肢は膝立て可能、寝たまま下腿の挙上は困難。
  • 2(Poor):重力の影響を除いた肢位でなら、運動範囲全体、または一部に渡って動かすことができる。重力を除外すれば、可動域で運動できる。上肢・下肢は挙上できない(ベッド上で水平運動のみ)。
  • 1(Trace):筋収縮が目に見える、または触知できるが、関節運動はおこらない。筋収縮は見られるが、肘関節あるいは膝関節の動きが見られない。上下肢は筋収縮のみ。
  • 0(Zero):筋収縮・関節運動は全くおこらない。(完全麻痺)


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